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書評 「The Quants」 (前編)

最近出版された 「The Quants」 (http://www.amazon.co.jp/Quants-Whizzes-Conquered-Street-Destroyed/dp/0307453375) という本について紹介いたします。

クオンツとは、数学的手法を使い、市場の分析や新しい金融商品の開発を行う人達を指します。この本では、クオンツがウォール街を中心に如何に活躍したかと、失敗したかについて描かれています。

著者のスコット・パターソンはウォールストリートジャーナル紙の記者であり、クオンツの人たちが成し遂げてきた功績に対してどちらかと言えばネガティブな側面で考えています。しかし、有名な学者や天才と呼ばれた人たちが、如何にマーケットの世界と関わり、実際の運用でどれだけ成功したかを知るのには大変興味深い本であると思います。

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本書では、過去にクオンツとして活躍した有名な人物として、エド・ソープが挙げられています。

エド・ソープはブラックジャックでカウンティングと呼ばれる手法を用いて、実際にカジノで利益を上げることに成功します。具体的にはケリー基準と呼ばれる投資額決定の理論がベースになっていて、期待値がプラスであるゲームに関して、長期的な資産形成を行うのにどれだけ投資すれば良いかという理論です。ソープによる 「THE MATHEMATICS OF GAMBLING」 という論文は、ブラックジャックだけでなく、バカラやルーレットやバックギャモンなど多岐に渡ります (http://www.bjmath.com/bjmath/feature.htm)。

ソープは、情報工学の父と呼ばれるクロード・シャノンと共にルーレットを購入し、スローモーションでボールがどこに落ちる可能性が高いかを調べるためにストロボで撮影するなど、ギャンブルに対しても研究熱心でした。ソープとシャノンは協力してカジノで遠隔装置のようなもの(現在で言うウェアラブルコンピュータ)を靴に埋め込み、ボールがどこに落ちる確率が高いかをデバイスを通じて伝えた、というエピソードもあります。シャノンの情報理論的には、ルーレットに歪みなどがあれば、出る目のエントロピーを小さく出来る、ということを表しており、情報の単位であるビットとマネーが結びつくという、ベル研究所で働いていたジョン・ケリーの論文とも近い部分があります。

その後ソープは金融の世界に足を踏み入れ、ワラントの適正な価格をモデリングし、ミスプライシングを発見するところから始まり、実際にそれを収益機会とするファンドを立ち上げています。

ソープのような、数学好きやエンジニアの人たちがウォール街に集まり、利益を上げるトレードを考え出すクオンツとして活躍するようになりました。ソープはワラントの価格付けに、確率を利用したモデルを使っています。ワラントとコールオプションは数学的にも同じような扱いが可能であり、有名なブラック・ショールズモデルにも影響を与えていると言ってもよいでしょう。

クオンツと呼ばれる人たちは、マーケットで起こる事象を数理的なモデルで表現しようとします。金融商品価格のモデリングというテーマは、古くから議論がなされており、歴史的には1900年 に債券価格がランダムに動くといったルイ・バシェリエの「投機の理論」が金融工学の原点であったと言えるでしょう。

その後も、金融商品を組み合わせたポートフォリオを考える上で、リスクが小さくなるポートフォリオを提案した、ハリー・マーコビッツや、効率的市場仮説と呼ばれる、ファーマの理論など、後に数 理モデルは大きく発展します。

経済学者だけではなく、例えば、カオスやフラクタルの分野で有名なマンデルブロは、綿花の価格変動が、正規分布のような単純な分布ではなく、冪(べき)分布に従うような、フラクタルに近い性質があることを発見します。あらゆる分野の研究者が、マーケットで起きている現象を数理的に捉えようと挑戦し続けています。その結果として、複雑なデリバティブなどの商品が浸透するようになったと考えられます。

次回は、本書の情報技術分野について触れたいと思います。 <中編に続きます。>

大矢倫靖 トレード・サイエンス主任研究員

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