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書評 「The Quants」 (中編)

前号に続き、最近出版された 「The Quants」 (http://www.amazon.co.jp/Quants-Whizzes-Conquered-Street-Destroyed/dp/0307453375)という本について紹介いたします。

情報技術に話を戻しますと、コンピュータ、ネットワーク技術等の目覚しい進歩により、トレードを行う環境も大きく変化しました。近年では、特に短いタームのトレードが注目されています。例えば、ルネッサンス・テクノロジーと呼ばれるヘッジ ファンドは短い期間のトレードに着目してハイフリークエンシー・トレーディング(高頻度売買)と呼ばれる手法で大きな利益を上げています。

コロケーション システムと呼ばれる、取引所の近くにサーバーを設置し、少しでもレイテンシを小さくすることで、市場によってはミリセカンド(1000分の1秒)単位での高速な取引を行うことが可能になりつつあります。近年は、ネットワークやマシン、サーバーといった、インフラ投資も、リターンを上げるのに不可欠な要素になっていると言えるでしょう。

本書でも取り上げられている、ルネッサンス・テクノロジーはニューヨークにあるロング・アイランドの軍事基地の近くにある場所に存在します。本社のあるRoute 25Aという住所はジョージ・ワシントンが独立戦争後に1790年の4月22日に、スパイに会うために寝泊りした場所だそうです。創始者のジェイムズ・シモンズは数学が得意であり、ひも理論などの物理の専門家でもありますが、MITやバークレー校を出た後、教授の給料に満足しなかったためか、防衛研究所(Institute for Defense Analysis)で働いており、冷戦時の暗号解読に携わっていました。

<以下続きます.....Continue readingをクリックしてください。>

その人脈を活かし、IDAの暗号研究者で音声認識の分野で活躍していたバウムと、IDAの 数学者のウェルチに声を掛けます。この二人は、情報工学で使われている、バウム・ウェルチアルゴリズムと呼ばれる、隠れマルコフモデルのパラメータ推定のアルゴリズムを考案した人として有名です。バウムは投資に関して当時関心が無かったようですが、シモンズとともにマネメトリクスという、ファンドを運用する会社で働くことになります(http://www.bloomberg.com/news/marketsmag/mm_0108_story1.html)。

シモンズは、1982年にはルネッサンス・テクノロジーを設立し、1988年にメダリオンというファンドの名前が、受賞した数学の賞にちなんで名付けられました。そして1989年にファンドがスタートします。このファンドは平均年利35%という素晴らしいリターンを上げることになります。その後もRIEF(Renaissance Institutional Equities Fund)などのファンド運用で成功し、2008年には2500億円近くの報酬を受け取っています。

音声認識や暗号解読などの専門家を集めたということは、一見投資には無関係にも思えますが、マーケットから出てくる数字を暗号のように解読することで隠れた 情報を発見するといった能力が、マーケットの性質を捉えたり、利益を出すトレードを考えるのに大切な要素だったと考えられます。相場を解析することと、暗号を解読することは同じような能力が求められ、ファイナンスの専門家よりも、音声認識の専門家の方が、利益を上げるのに貢献すると考えたのかもしれません。

しかし、大きな成功を収めたストーリーの裏側にも、紆余曲折がありました。
例えば2003年に、ルネッサンスが過去に働いていた2人の社員に対して、トレードに関する秘密を悪用したということで、訴訟を起こしたという出来事があります(http://www.bloomberg.com/apps/news?pid=newsarchive&sid=agxVXC.r9Edw)。

しかし、その2人も、以下のような点があったと主張し、ルネッサンスの運用手法に疑問を投げかけています。

・POSIT(電子取引所)の投資家を欺くようなトレード手法を考えるように上司に言われた
・POSITが秘密にしておきたい情報を暴くようなアルゴリズムを作るように言われた
・SECの空売り規制に違反するようなスワップ取引があった

2人は法に違反していると考え、当時のルネッサンスの申し出を断っていますが、
結局、他の社員がそのようなストラテジーを作成した、とも言われており、数々の疑惑も存在し、この他にも残酷なエピソードが記載されています。

結局どのような手法で利益を上げていたかは本人たちのみぞ知る、といった具合であり、詳細は分かりません。本書にも「唯一つ確かなことは、シモンズは語らないということだ」とも書かれており、今後も運用手法やリターンの源泉などが明かされるはないでしょう。やはり、儲かるアルゴリズムは秘密にしなければならないということでしょうか。

次回は、ピーター・ミュラーについてや、モルガン・スタンレーのPDT( Process Driven Trading)と呼ばれるプロップトレード部門についての話などを中心にご紹介させて頂きたいと思います。 <後編に続きます。>

大矢倫靖 トレード・サイエンス主任研究員

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